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〜イギリスピアノ音楽シリーズT〜
レノックス・バークリー
演奏会用練習曲 変ホ長調 作品48/2
コリン・ホースリーへ (1955)
 

1940年代から1950年代にかけてバークリーと同世代の英国の作曲家、例えばベンジャミン・ブリテン、ウィリアム・ウォルトン、そしてマイケル・ティペットは彼ら独自のスタイルで、多くのイギリス・オペラを作曲しました。1950年代におけるバークリーのオペラの創作において、特にブリテンの劇場音楽へのイマジネーションはバークリーの創作意欲を大いに刺激したようです。ブリテンは1936年から1950年代にかけて次々とオペラの傑作を生み出しており、この時期の彼の重要な作品として"ピーター・グライムズ"作品33(1945)、"ルクレーシアの凌辱"(1946)、"アルバート・へリング"作品39(1947)、"ビリー・バッド"作品50(1951)そして"グロリアーナ"作品53(1953)などが挙げられます。ブリテンの傑作"ねじの回転"作品54(1953)完成の翌年1954年にバークリーのオペラ"ネルソン"作品41(1953)がロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で、そして同年、夏のオールドバラ・フェスティヴァルでは一幕オペラ"ディナーエンゲイジメント"作品45(1954)の初演が果たされています。ウォルトンのオペラ、"トロイラスとクレシダ"はバークリーの"ネルソン"と同年の1953年の創作、そして翌年の1954年にティペットはオペラ"真夏の結婚"を作曲しました。

この演奏会用練習曲、作品48/2はピアニストのコリン・ホースリーのためにバークリーが劇場音楽を手掛けている只中の1955年に書き上げた作品です。三分に満たないこの曲は両手のリズミックなコントラストがドラマティックで且つ陰影のある緊張感をもたらす優れた作品といえるでしょう。この作品の他にピアニストのホースリーのために書かれた作品は"ピアノの為のスケルツォ"作品32/2、"ピアノ・コンチェルト"作品46などがあります。ホースリーは"ピアノ・コンチェルト"をジョン・バルビローリ、バジル・キャメロン、ユージン・グーセンス、チャールズ・グローブズ、そしてバークリー自身の指揮のもと数多くの演奏を英国内外で行いました。バークリーは1940年代と1950年代にわたり五つの映画音楽を手掛け、多くのラジオ番組の為の音楽、そして劇場音楽を意欲的に創作していきました。この時期のバークリーの主要作品には、コリン・ホースリー委嘱による"ホルン・トリオ"作品44(1954)、"リコーダー/フルート、ヴァイオリン、チェロ、ハープシコード/ピアノのためのコンチェルティーノ"作品49(1955)、オペラ"ルース"作品50(1955)、"第二シンフォニー"作品51(1956)、そしてギタリストのジュリアン・ブリームの為に書かれた"ギターの為のソナチネ"作品52(1957)など比較的大規模な作品が挙げられます。


アレグロ・ヴィヴァーチェ

2/4拍子の"演奏会用練習曲"はその名のとおり特にフィンガー・アーティキュレーションとリズムの精密さが重要な作品です。 右手のアルベルティ形のフィガレーションを背景に、左手はメロディーの歯切れの良いスタッカートが印象深い曲です。中間部の"メノ・ヴィーヴォ"において動きはやや抑制され、旋律のF#、B、Eのリテヌートが曲に膨らみと豊かな情感を添えています。後半はアッチェレランドを伴いテンポ・プリモに戻り、終結は両手の半音階の上昇、クレッシェンドでフォルテシモに到達し,強いアクセントを伴う基音の変ホ音で決然と閉じられます。


試聴用データ→ 「演奏会用練習曲 変ホ長調 作品48/2 」


井田久美子     2006年 3月

 

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