ロベルト・シューマン
Robert Schumann (1810-1856)
「交響曲第4番 ニ短調」作品120
ピアノ・デュオ版(シューマン自身による編曲)
Symphony No.4
ピアノ:紫垣 英二/木村 徹
2006年3月25日 Hakuju hall「紫垣英二ピアノリサイタル」より
Piano:
Eiji Shigaki, Toru Kimura
2006.3.25 Hakuju Hall "Eiji Shigaki Piano Recital"
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『交響曲第4番ニ短調』作品120
ピアノ・デュオ版(1853年の初版版での演奏) プログラムノート
ドイツ・ロマン派最大の作曲家ロベルト・シューマンRobert Schumann( 1810−1856)はロマン派という概念が最も当てはまる作曲家でしょう。彼は幼い頃から当時のロマン派の文学作品に親しみ、最終的に音楽家を目指すまでは、文学を目指すべきか長い間迷っていました。その影響で、彼の作品には「幻想」「夢」などのタイトルが頻繁に登場します。まさに彼こそが真の意味での"ロマン派"といえるでしょう。彼の有名な『幻想曲』作品17や『ピアノ・コンチェルト』には、そんなシューマンの音楽性=幻想性が端的に表されています。実は交響曲第4番も1841年に最初に作曲された当時その手稿譜には、『交響的幻想曲』というタイトルが付けられていました。このシューマンの意図は、オーケストラの壮大な演奏で聴くよりも、ピアノ・デュオというコンパクトにエッセンスが凝縮された形で、誤解を恐れずに言うならば、"ピアノ交響曲"として聴いてみると、シューマンがこのシンフォニーに託した「幻想性」がダイレクトに伝わってきます。つまりこの曲はあくまで最初の意図どおり『幻想曲』なのであって、それが『交響曲』という形を取っているのだということが。最終的に1853年に第4番というかたちで初演されたこの曲を、その年に出版されたピアノ・デュオ版の初版で演奏する意図はまさにそこにあり、また今では失われてしまった音楽サロンにおける音楽の楽しみを現代のピアノ演奏を通じて再現することにもあります。全4楽章が一つの有機体として、大きな幻想の一大スペクタクルとして移ろって行くのが実感されます。これはもうオーケストラの代用品なのではなく一つの独立した音楽の世界=芸術作品です。ピアノ・デュオを通じて様々な音楽作品を楽しめるという演奏のスタイルが、このピアノ・デュオ版には込められているのです。
ヴァデ・メクム HABA