(T) モデラート 
                        
                      憂いを伴うメロディアスなト短調の小品はセレナーデのような特徴を持っています。基本的に作品は6/8拍子でも成立しますがバークリーはこれを3/4拍子に設定しています。この効果は左手の伴奏型(六つの8分音符を二分割)の上にメロディーの4分音符をのせることにより旋律がサスペンションされているような錯覚と旋律の息の長さが保たれていることに顕れているといえるでしょう。リズム感覚が遊び心を持って綴られた小品です。 
                         
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                        (T)
                       
                       
                        (U) アンダンティーノ 
                        
                      第一曲目に比べてゆったりした表情を持つ楽曲です。曲は4/4拍子で書かれており第一拍目と第3拍目にポルタメントを用いることにより全体の表情に動きと軽さを与えています。曲は大きくA,B,A',で構成されています。そのテーマは4小節のフレーズで成り立ち問いと答えという形で提示されています。 
                        
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                        (U)
                       
                      (V) アレグロ
                      第三曲目、アレグロは鍵盤の広範囲の音域を使用することによりドラマティックな効果を生むことに成功しています。バークリーのソナタでも重要なファクターであった六度音程はここでもアクセントを伴う形で随所に現れています。作品のクライマックスにおいて半音階を用いてテンションを上げていく手法もバークリーの作曲技法のひとつであったことが窺えます。曲の冒頭からアクセントつきの六度音程が強いインパクトを与える4/4拍子の作品です。
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                        (V)
                       
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                        (T)〜(V)
                      
                       
                      井田久美子   2006年 2月  
                         
                      
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