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〜イギリスピアノ音楽シリーズT〜
レノックス・バークリー
五つの小品 作品4 (1936)
 

バークリーの五つの小品、作品4は彼の比較的初期の重要なピアノ作品です。彼のピアノの代表作であるソナタ作品20が第二次大戦の終わった年1945年の完成ですから、それよりほぼ十年溯った作品になります。この当時の主だった作品に、"ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第二番"作品1(1933)、英国とアメリカで成功を収めた"2台のピアノのためのポルカ"作品5(1934)、また第一番、エチュードがピアニストのハリエット・コーへンに献呈された"三つのピアノ曲"作品2(1935)などがあります。"五つの小品"が作曲される前年、1935年に作曲された"オーケストラのための序曲"作品8は、同年の"プロムス"(ロンドンの夏の音楽祭)で彼自身の指揮によって初演されています。また"五つの小品"を作曲した1936年にはオラトリオ、"ジョナ"作品3が、BBCオーケストラの演奏によって初演されました。1936年、四月にバークリーはベンジャミン・ブリテンとバルセロナにおけるISCM(国際現代音楽協会)フェスティバルで出会うことになります。"オーケストラのための序曲"作品8は、この音楽祭の参加作品にも選ばれています。ISCMの音楽祭でバークリーはブリテンと同様にアルバン・ベルクのヴァイオリン・コンチェルトに深く感銘を受け、後に彼は"この作品があまりに強烈な印象を与えたため他の曲がかすんでしまった・・・"と当時の印象を語っています。この音楽祭で演奏された英国の作曲家の作品はバークリーとブリテン、二人の作品のみで、ブリテンは"ヴァイオリンとピアノの為の組曲"作品6を披露しています。1937年、バークリーはブリテンとのコラボレーション、カタロニア地方の民謡をもとにした交響組曲、"モン・ジュイ"作品9を完成させました。

バークリーの初期の作品においては何気ない小品は特に注目に値する秀作で、この"五つの小品"作品4も例外ではなく、あたかもバークリーの作曲技法の小宇宙の如く、完成度の高さと彼のチャームやウィットを反映させています。彼はこの小品を絶妙なバランス感覚と厳選された素材をもって、コントラスト溢れるテクスチャーで仕上げています。また独特なリリシズムや繊細な和声進行などは、バークリーの生涯の友人であった、フランシス・プーランクのピアノ作品を彷彿とさせます

1937年の7月、バークリーはブリテンと共にイギリス南部コーンウォール、ニューキー(Newquay)に数日間滞在しています。 彼らは当時の新作、ブリテンは"狩をする先祖"Our Hunting Fathers,(この作品は翌年の9月、ノーウィッチ音楽祭で初演されています。)そしてバークリーはオラトリオ"ジョナ"と"五つの小品"を互いに検討しあい、個人的な思想上における類似点のみならず、音楽的にも共鳴する部分が多くあることを確認しました。後にブリテンはこの有意義なコーンウォールでの滞在とバークリーへの友情について日記で回想しています。"五つの小品"作品4はバークリーのパリ時代、フラットシェアをし、共同生活を送った友人、ホゼ・ラファリ(Jose Raffalli)に献呈されています。

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