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〜イギリスピアノ音楽シリーズU〜
ベンジャミン・ブリテン
ホリデーダイアリー 作品5 (1934)
 

この曲が作曲された1934年は、ブリテンが作曲家として身をたてる決意を新たに、3 年間の王立音楽大学(RCM)を後にした年でもありました。また翌年には多くのコラ ボレーションを行うことになる詩人のW・H・オーデンとの出会いなどがあります。表 題が“ホリデーダイアリー”に変更される以前のオリジナル・タイトルはホリデーテ イル(HolidayTail)と されており、ウィンスロップ・ロジャーズ社(Winthrop Rogers)による1935年の初 版でもこのタイトルで発行されていました。この作品はブリテンの音楽大学の三年間 (1930〜1933)ピアノ演奏で師事を受けたアーサー・ベンジャミンに献呈されていま す。オリジナルのタイトル、ホリデーテイルも当時おそらくこのアーサー・ベンジャ ミンが提案したものと 考えられています。ブリテンはこの頃、特にドキュメンタリー映画、ラジオでの演劇 など多様な標題音楽に応じた作曲活動に優れた才能を示していました。ブリテンは独 自の音楽的イマジネーションを巧みな作曲技法で表現することに 成功し、場面に相応したその変幻自在な書法での描写は彼の重要な音楽言語の一面で もありました。

ブリテンが二十歳のときに仕上げた作品、“ホリデーダイアリー”は標題的に書か れた楽曲です。溌剌として機微の ある青年らしい全4曲の描写はブリテンの音楽的メタファーにおける鋭い感覚を想起 させます。作曲家の情景への傑出したイマジネーションが全曲にわたって発揮され、 躍動感とコントラストに満ちた“音楽的スケッチ”とも言うべきチャ ーミングな作品に仕上がっています。

“ホリデーダイアリー”作品5の書かれた年、1934年の前後にはブリテンの意欲溢 れる多くの作品が生まれています。 その主な代表作には前年に書かれた彼の作品1となる“シンフォニエッタ”(1933)、 続いてオーボエと弦の為の“ファンタジーカルテット”(Phantasy Quartet)作品2 (1934)、1936年の二つの代表作“弦の為の三つのディベルティメント”と“狩猟を して暮らした我々の先祖は”作品8、そして翌年にはヨーロッパにおける最初の成功 を見た“フランク・ブリッジの主題による変奏”作品10などが書かれました。作品1 の“シンフォニエッタ”(1933)はその当時、ブリテンが影響を受け たと思われるモダン・ヨーロピアンのトレンドが見受けられます。この作品で独自の技巧とスタイルを確立することに成功し自信を得たブリテンは新たな楽曲"ファンタジー・カルテット"作品2では例えばヴォーン・ウイリアムズやスタンフォード、そしてその系統を受け継ぐジョン・アイアランドやブリッジに代表される英国の伝統的な様式に基づいたスタイルを、その楽曲に示しています。作品2は1934年にロンドンで初演されますが、その後再びフローレンスにおけるI・S・C・M(国際現代音楽協会音楽際)での演奏が実現されました。ブリテンが自ら"これが私の真の作品1だ。"と自信を込めて発言したように"狩猟をして暮らした我々の先祖は"作品8は作曲家のオリジナリティに溢れた初期の作品の傑作といえるでしょう。因みにこの作品は英国のノーフォークとノルウィッチ音楽祭から1934年に委嘱され書かれたものですが実際に曲のテクストの創作者、オーデンと共に作曲に取り組んだのは1936年の一月に入ってからのことでした。

井田久美子   2007年 2月

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